鉱物中の構成元素の電子(酸化)状態を知ることは、鉱物の生成条件や変成過程などを研究する上で重要な問題である。特に隕石では、その成因は太陽系や惑星の成因と直接結びついているので、酸化還元状態について知見を得ることに大きな関心が持たれている。本研究では、シンクロトロン放射光をX線源とする蛍光X線分析法を用いて、隕石に含まれる鉄、チタン、クロムの状態分析を行った。 一方、全反射蛍光X線分析による鉱物中の微量元素の定量法の確立をめざして、粉末X線回折計のゴニオを試料回転ステ-ジとして利用し、管球X線源を使った全反射蛍光X線分析システムを設計した。現在信号を検出できる所までシステムが完成しており、来年度実試料を測定できる見込みである。 状態分析の測定は、高エネルギ-物理学研究所放射光実験施設のビ-ムライン4Aで行った。測定した試料は、Allende、Murchson、Semarkona、Krymkaの隕石である。鉄の状態分析の標準として、金属鉄、黄鉄鉱、磁鉄鉱、針鉄鉱、鉄かんらん石等を用いた。Allende隕石とMurchson隕石について、特にコンドリュ-ルとCAIにおける鉄の酸化還元状態に着目して点分析により状態分析を行った。これらの隕石におけるコンドリュ-ル中の鉄は、標準試料のオリビン中の鉄とほぼ同じ状態にあり、2価であることがわかった。また鉄の酸化状態別2次元イメ-ジを得るために、選択励起蛍光X線分析を行い、これらの隕石について状態別のイメ-ジ得た。さらにKrymkaおよびSemarkona隕石中のチタン及びクロムの状態分析を同様の方法で行った。試料のスペクトルのケミカルシフトは3価のクロムのスタンダ-ドより高エネルギ-側であり、クロムは3価程度の酸化的状態で存在するものと考えられた。またチタンは両隕石中では4価で存在する事を明かにすることができた。
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