内壁をBNで覆った黒鉛坩堝にB_2O_3ーSiO_2系またはB_2O_3ーCaO系フラックスを入れ、CO雰囲気下、1823Kで溶融平衡させた。実験終了後、試料中の窒素、B_2O_3をそれぞれケルダ-ル蒸留法、中和滴定法を用いて定量し、フラックス中の窒素溶解度を測定した。 B_2O_3ーSiO_2系のBN溶解度はSiO_2濃度の増加にともない減少した。熱力学デ-タから、窒素はシリコン原子よりもボロン原子に配位しやすいと予想され、この仮定に基づいて推定したBN溶解度は実測値によく一致した。この結果から、B_2O_3ーSiO_2系融体中の窒素は主にボロン原子に配位していることが明らかになった。B_2O_3ーCaO系では、0.5<X_<CaO><0.75の範囲ではCaO濃度の増加にともないBN溶解度は減少したが、0.75<X_<CaO><0.85の範囲では逆に増加した。CaO濃度が増加するとネットワ-ク構造が分断されるために、溶解した窒素が安定なクロスリンク構造を形成することができなくなるためにBN溶解度が減少するが、0.75<X_<CaO>の非常に塩基性の領域ではボロン原子に配位していないフリ-なN^<3->が安定になるために、BN溶解度が増加すると考えられる。二つの系のナイトライドキャパシティ-はB_2O_3濃度が高いほど高く、純粋なB_2O_3では従来SiO_2系で報告されている値よりも二桁以上高い10^<-9.7>であった。 15B_2O_3ー85CaO(mol%)融体について窒素溶解度の窒素分圧及び酸素分圧依存性を1823Kで測定した。窒素溶解度はほぼ窒素分圧の平方根に比例して増加した。酸素分圧が10^<-16.3>atm以上では、窒素溶解度は酸素分圧によらず顕著な変化を示さなかったが、それ以下になると酸素分圧の低下にともない窒素溶解度は増加した。以上の結果から、本実験の条件下での窒素の溶解には物理的溶解と化学的溶解の二つの異なるメカニズムがあることが明らかになった。
|