1.アルゴルー酸素混合ガス吹付けによる溶鉄の低炭素濃度域の脱炭の場合、比較的低酸素分圧においても溶鉄表面に酸化膜が生成する。この酸化膜が脱炭速度を低下させることを明らかにし、酸化膜における速度過程を考慮した反応モデルにより説明した。 2.マグネシア、アルミナ、カルシアるつぼを用い、るつぼ材酸化物との反応による溶鉄の脱炭実験を行った。脱炭速度は酸化物によって変化し、炭素濃度が100ppm以上においては、脱炭速度は炭素濃度に依存せず、それ以下になると炭素濃度の減少とともに変化することを明らかにした。酸化物の解離反応は、反応界面におけるCO生成反応などを考慮した反応モデルを構築し、実験結果を説明した。なお、多孔質るつぼの場合、るつぼーメタル界面で生成したCOガスはるつぼの気孔を透過し、温度低下によって炭素析出反応を起こし、るつぼ材中に炭素が蓄積することを示した。 3.固体酸化物による溶鉄、溶融鉄ークロム合金の脱炭反応を促進するため、真空吸引脱ガス法を適用して極低濃度域における脱炭実験を行った。真空吸引脱ガス法は、内部を減圧にした多孔質管(酸化物)を浴中に浸漬し、浸化物ーメタル界面で生成したCOガスを迅速に吸引除去する方法である。多孔質管の酸化物成分としては、Al_2O_3、SiO_2、MnO、Fe_2O_3、Cr_2O_3などを用い、その組成および気孔率を種々変化させた。脱炭速度は酸化物の解離酸素圧が高く、ガス透過性がよいほど増加することを示した。Al_2O_3管に比較すると、Al_2O_3ーSiO_2管の場合の脱炭速度は非常に大きく、さらにSiO_2がムライト(3Al_2O_3・2SiO_2)として存在するよりクリストバライト(SiO_2)として存在する方がSiO_2の活量が大きく、脱炭速度がはやいことがわかった。なお、Al_2O_3ーFe_2O_3管の場合、メタルが管内の気孔に侵入する傾向があった。
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