研究概要 |
高分子の基本的な物性の一つである熱特性を自由体積変化から解析するため、コンピュ-タコントロ-ルで試料温度を変えながら陽電子の寿命を測定する装置を設計、製作した。得られた時間分解能は270ps,1チャンネル当りのカウント数は4、5×10^5であった。この装置を用いて重合度が異なるポリエチレンの陽電子消滅測定を温度を変えながら行って,各温度でのτ_3消滅寿命とI_3強度を測定した。また結晶化度が異なる高密度ポリエチレン温度による陽電子消滅寿命と強度の変化はガラス転移点より高温ではτ_3寿命の伸び方が鈍くなるのに対して、強度(I_3)はガラス転移点以下よりも急激に増加することを見出した。また、3次元網目構造を持つエポキシ樹脂の測定で自由空間の大きさを変えた試料でτ_3に顕著な違いを見出した。硬化条件が一定であれば網目鎖濃度とτ_3の相関関係はほぼ直線になり、硬化条件の温度が上がるに従って、直線のτ_3が大きくなる方向にシフトした。エポキシ樹脂は1つの網目の中に他の網目や分子鎖が侵入して網目を作る相互網目を形成すると考えられるが,硬化温度が高いと分子鎖の振動が激しいために,分子鎖が他の網目に侵入して網目を作りにくい。同じ反応率でも、硬化温度が低い方が、相互侵入網目を形成している確率が高く、自由体積の平均値は小さくなると考えられる。また消滅γ線(511KeV)のドップラ-広がり測定からoーポジトロニウムの3光子消滅の割合が、網目鎖濃度の上昇とともに減っていることを確認した。
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