研究概要 |
生体や天然水中に微量存在する金属イオンは単独で存在することは稀れで、一般にはタンパク質その他の生体高分子と結合した金属錯体であることが多い。本研究はこのような金属タンパク質、金属酵素、その他の生体関連高分子錯体を検索することを目的とした。そのためにまず微量金属の多元素同時時系列測定を可能にするICP(誘導結合プラズマ)発光分析システムを開発し、このシステムの前段に液体クロマトグラフィ-の検出器として多波長可視・紫外検出器、フォトダイオ-ドアレイ検出器、蛍光検出器をオンライン結合した。このような多段階検出システムによって、ICPより前段のクロマトグラフィ-検出器によって生体高分子と場合によってはその中の官能基をモニタ-し、最終的には試料溶液を移動相とともにICP中に導入して多元素同時モニタ-のクロマトグラムを測定することが可能となった。また、フォトダイオ-ドアレイ検出器では化合物のスペクトル情報を加えた三次元クロマトグラムのオンライン測定が可能であり、化合物の同定に有用であった。 今回開発した測定システムを用いて、筋肉ミオグロビンの等電点を利用するクロマトグラフィ-による分離挙動とキャラクタリゼ-ション、天然水中のカルボキシペプチダ-ゼやクロロフィル化合物の選択的高感度分析法の開発、湖水中の溶存化学種の分離挙動等の研究を実施した。とくに、クロロフィル化合物では、a,b,cクロロフィルの同定並びにその誘導体への変性過程について興味ある知見を得た。また湖水試料は限外口過法により500〜2000倍濃縮を行ない、分子量30万以上,10〜3万,3万〜4000に相当する高分子の存在と、これらの高分子と鉄,亜鉛、銅、マンガン,モリブデンその他の微量金属の特異的挙動を調べることができ、天然水中の金属イオンの溶存状態の研究に大きな展望を得ることができた。
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