研究概要 |
水素化シリコン,水和ガラス,およびアルミナ薄膜を対象として構造に及ぼす水素の影響を検討した.各対象での研究実績は以下の通り. 1.水素化シリコン 高周波プラズマCVDにより作製したアモルファス水素化シリコン中の水素の存在状態に対して,製膜時の基板温度の効果が製膜後の熱処理による効果より大きいことを見いだした.低温製膜試料ではクラスタ-状水素の存在比が大きく,この状態の水素の存在が光劣化感受性増大の主因となっていることを伝導度測定より明らかにした. 2.水和ガラス 水和したソ-ダシリカガラスの加熱脱水による赤外,ラマンスペクトルの変化を測定し,水和ガラス中の水素の存在形態が,ガラス網目構造にあまり影響を与えない(1)非架橋酸素と結合,および(2)SiOHに結合した水,並びに(3)SiーOーSi網目構造に結合して網目構造を弱める水として三種に分類できることを明らかにした.さらにケイ酸塩ガラスへのアルカリ導入時の電子状態の変化について非経験的分子軌道計算による解析を行い,ソ-ダシリカガラスにおいて上記(3)のガラス網目と分子状の水との相互作用の存在を支持する結果を得た. 3.アルミナ スパッタリングにより作製したアルミナ薄膜表面において水素と水の間で水素同位体交換が進行することを見いだした.薄膜構造をX線回折法で解析した結果,アモルファス状態であり,加熱によって850℃でγーアルミナに,さらに1150℃でαーアルミナへと構造変化することを明らかにした.
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