研究概要 |
平成3年度に得られた研究実績を対象別にまとめる. 1.アモルファス水素化シリコン(aーSi:H)熱処理に伴うクラスタ-状水素の減少により,X線散乱曲線のハロ-ピ-クが高角側にシフトした.この挙動については現在検討中である.反応性スパッタリング法によるaーSi:Hは,高い基板温度で製膜してもプラズマCVDによる薄膜に比べクラスタ-状水素の占める比率が高かった.しかし,この試料ではCVD薄膜と異なり電気伝導度の光劣化感受性が低く,光劣化はクラスタ-状水素の存在以外に膜自身の構造も関与した現象であることが分かった. 2.水和ガラス 水和ガラス中の水の存在状態と水和による局所構造変化を^<29>Si NMRおよび非経験的分子軌道計算により検討した結果,水分子の水素とアルカリが交換して生じるNaOHがガラス中に安定に保持され,さらに分子状の水が導入されてNaOHの易動度が上昇すると,架橋酸素と反応し,ガラス網目を切断する機構を提案した.また,アルカリケイ酸塩ガラスの混合アルカリ効果についてその機構を検討し,水和ガラスにおける水の導入効果とアルカリ添加効果との類似性および特殊性について明らかにした. 3.アルミナ スパッタリングにより作製したアルミナのアルミニウムの配位状態をNMRにより調べた.作製時のアモルファス状態では4,5,6配位から成る.この薄膜表面上でD_2ーH_2O間水素同位体交換速度の測定を行った.反応速度の水および水素分圧依存性と,各分子のアルミナ表面への吸着状態の分子軌道計算から評価し,表面での同位体交換反応が,4配位状態の配位不飽和で生じた3配位のアルミとその隣の酸素からなるAcidーBase Pairに水素が吸着し,近傍に存在するAlOーHサイトの水素と交換する機構で進行することを明らかにした.
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