研究概要 |
ゲルガラスと溶融ガラスは構造や性質がよく類似していることがSiO_2を始めとするいくつかのガラスについて確かめられている.従ってゲルとガラスの熱的安定性も類似するはずである.ゲル化傾向とガラス化傾向は類似したものになると推測できる.本年度はB_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系を選び,ゲルを作製し,その熱的安定性を調べ,溶融ガラスの一定の冷却速度におけるガラス化領域との関係を考察した.ゲルの作成原料として,B(OBu)_3NaOMe,Al(Oispr)_3,溶媒としてisoーPrOHを使用した.水を添加しないで調合原料はビ-カ-中で室温で放置して空気中の水分によってゲル化させた.得られたゲルはエアバス中で50℃,3日間乾燥した後,粉末X線回折法によりゲル化の判定を行った.ゲルの熱処理は1℃/分の速度で昇温し,200°〜800℃で2h保持して行い,ゲル化領域の変化を調べた.ゲルの結晶化温度Tcは5℃/分の昇温速度で行ったDTA測定の結果より求めた.液相温度Teは加熱ステ-ジ付きの顕微鏡によって決定した.別に落下法により液相温度Teも確認した.顕微鏡下での加熱中の観察においては,Na_2Oなどの蒸発によって石英ガラス板が曇って観察が困難となったのでガラス板が回転できるよう加熱ステ-ジのカバ-部分を改良した.溶融法のガラス化領域はB_2O_3,Na_2CO_3,Al_2O_3を原料として,双ロ-ル,水冷,空冷,炉内放冷,温調冷却によって決定した.ゲル化領域はB_2O_3を除く,高B_2O_3ーAl_2O_3組成に広がる広い範囲であった.800℃ではゲル化領域はAl_2O_3 rich組成に縮少した一方,B_2O_3 rich組成では溶融ガラスが生成した.この様に融点の違う組成のゲルの熱的安定性を比較する場合,Tcだけで比較することは出来ない.ゲルの熱的安定性をTc/Teの値で表わしてみた.この系の等Tc/Te関係によるとTc/Te値の大きい組成域(Na_2O=40,B_2O_3=50,Al_2O_3=10ml%)が突冷のガラス化領域に対応した.Tc/Te値と臨界冷却速度の逆数は対応することが示唆された.
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