研究概要 |
ゲルガラスと溶融ガラスは構造や性質がよく類似していることがSiO_2を始めとするいくつかのガラスについて確かめられている。従ってゲルとガラスの熱的安定性も類似するはずである。ゲル化傾向とガラス化傾向は類似したものになると推測できる。本研究ではB_2O_3ーNa_2O系,B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系およびSiO_2ーNa_2O系のゲル化領域とゲルの熱的安定性をDTAを用いて調べた。そしてこれらの性質を溶融法によるガラス化領域および熱的安定性と比較した。まずゲル化領域に対する水分,融媒(塩酸およびアンモニア)の添加の影響を調べた。B_2O_3ーNa_2O系では化領域はB_2O_3=100および〈60モル%以外の組成であった。B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系ではB_2O_3ーNa_2O系で結晶化した領域がゲル化する領域も現求した。SiO_2ーNa_2O系ではSiO_2=60〜100モル%がゲル化領域となった。ゲル化時間は水分またはアンモニアの添加によって短縮した。これは遊離したNaOH又はNH_4OHが融媒作用を行ったと解される。ゲルの結晶化温度Tcは5°C/分の昇温速度で行ったDTA測定の結果より求めた。液相温度T_Lは加熱ステ-ジ付の顕微鏡によって決定した。別に落下法も併用した。B_2O_3ーNa_2O等のT_L/T_L一組成曲線にはB_2O_3=70モル%に極大値,80モル%に極小値が現れた。溶融法によるガラスのTc/T_Lの結果とよく一致した。0.5B_2O_3・0.5Na_2OーAl_2O_3系ではAl_2O_3の添加と共にTc/T_Lは増大し,Al_2O_3=23モル%で極大となり,28モル%で極小となった、SiO_2ーNa_2O系ではTc/T_LはSiO_2=70モル%に極大値,90モル%に極小値が現れた。Tc/T_Lゲルやガラスの生成能を示しており,同組成の溶融ガラスのガラス化の臨界冷却速度Q^*と対応することが期待された。そこでB_2O_3ーNa_2O系,B_2O_3ーNa_2OーA1_2O_3系のTc/T_LをlOgQ^*に対してプロットしてみたところ両者の間に直線関係が得られた。理論的な核生成速度と結晶成長速度を用いて,Tc/T_L比およびQ^*をシミュレ-トし,Tc/T_LーlogQ^*プロットを行ったところ,直線関係となり,上記の実験的関係ともよく一致した。
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