本研究はハロゲン化物や硫酸を担持しない、金属酸化物のみによる安定な固体超強酸触媒の合成を目的とした。H_O値がー12以上の酸強度を有する複合金属酸化物を調製し、しかも500℃以上の高温で使用でき、従来のルイス酸触媒に代わり得るものをめざすものである。 昨年度、酸化タングステンまたは酸化モリブデンを酸化ジルコニウム担体に結合させると、Ho値にしてー15までの酸強度を有する固体超強酸となることを報告した。今年度は、この合成方法を酸化スズ、チタン、および鉄の担体に応用し、酸化タングステンを結合させることにより極めて満足すべき結果を得たので、これを第10回国際触媒学会にて発表することとした。 1.超強酸は、スズ、チタン、鉄の水酸化物又は無定形の酸化物をメタタングステン酸アンモニウムに含浸させ、水を蒸発させた後空気中で焼成して得られる。これらは、気相パルス反応250℃でイソペンタンに活性な触媒作用を示し、生成物としてペンタン、ヘプタン、イソブタン、ブタン、プロパンが見い出された。最高活性を示す焼成温度は、スズの場合で1000℃、チタンと鉄で700℃であった(11ー13%、重量W)。Ho値ー12であるSiO_2ーAl_2O_3が本反応に不活性であるので、合成したものは超強酸と結論された。 2.いづれの触媒も表面はタングステンを含浸しない酸化物より、圧倒的に大きく、XPS測定よりWO_3がSnO_2、TiO_2、Fe_2O_3に担持されていることが判明した。合成のポイントは、無定形の酸化物を出発物質とする所にある事が、X線分析より判明した。 3.これらの触媒を、石炭の液化、ナフタレン系の芳香族のアシル化、NOx除去、などの触媒作用に応用中である。
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