サブミクロン粒径のコロイドを構成単位とする画像形成の可能性と特長を明らかにする目的で、2つの異なるアプロ-チにより研究を行なった。まず、0.1μmの粒径の酸化アルミニウム粒子の表面を感光性のアジド基で修飾したコロイド系では、材料設計とプロセス設計により、ポジ、ネガ両用の画像形成が可能であることを明らかにした。初期の予測とくにポジ画像形成では、予想を上回る高感度が得られた。この実験では、コロイド系に特有と思われる現象、すなわち、粒子の凝集・膨潤性の露光変化に基づく画像形成が可能であることが初めて示された。ただし、その際、基板表面のエネルギ-制御がポイントになる。 第2のアプロ-チとして、光触媒活性を有する微粒子の例として酸化チタンを選び、直接修飾基を導入した。修飾基として、最初不飽和ポリエステルを用いたが、コロイドの分散性と感光性の両立が難しかった。しかし、修飾基の一部を感光性のない飽和ポリエステルで置き換えたことで、期待どおりの感光特性を示すコロイド膜を作ることに成功した。しかし、なお酸化チタン粒子の表面状態の不安定性により実験の再現性の点で苦労があった。そこでこれを解決すべく、酸化チタン粒子表面の化学処理を試みたところ、新鮮な表面アモルファス相に比較的高い温度(250℃程度)でエチレングリコ-ルなどの修飾基を導入すると安定なコロイドが得られることを発見した。なお、この際、修飾基に感光性の成分が全くなくとも、光によって粒子の凝集が起こる予想外の現象が発見された。すなわち、0.1〜0.4μmの粒径をもつコロイドに光を照射すると、粒径分布に著しい変化が起こり、1〜2μmの粒子と0.08μm以下の超微粒子に分離することが認められた。 以上、コロイド感光系の実験により、いままで知られていなかったいくつかの新事実が明らかにされた。
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