酸化アルミニウム微粒子の表面を樹脂被覆し、さらに感光性のアジド基で修飾したコロイド系では、初期の予測を上回るほどの高感度が得られた。すなわち、コロイドを極く少量の反応性バインダ-樹脂(フェノ-ル樹脂を使用)を用いて10ないし20μmの厚さにガラス基板上に塗布した多孔質な構造を有する試料は、基板をシランカップリング剤で処理して、その表面エネルギ-(特に極性成分)を微粒子同士の凝集力とバランスする値に制御すると、表面側から露光したのち希アルカリ水溶液で現像した場合、従来の40倍の高い光感度で画像を形成することが判明した。500W高圧水銀灯を用いた場合の露光条件は、70cmの距離から20%中性フィルタ-を介して約4秒であった。得られる画像は露光部が現像で除去されるポジ型であった。 酸化チタンに直接化学修飾基を導入するタイプのコロイドでは、修飾基に感光性の成分がなくとも、光によって粒子の凝集が起こることが新しく発見された。これは、表面をエチレングリコ-ルで修飾した酸化チタン粒子を用いてはじめて観測さたもので、露光(15W紫外線蛍光灯で距離30cm、10秒間)により、表面から修飾基が脱離し、それに伴って粒子の凝集力が増加する新しい現象である。同時にコロイド粒子の親水性、疎水性の変化があるので、製版・印刷への応用が期待されるが、残念ながら年度内にその検討をするまでに至らなかった。 なお、本年度の新しい試みとして、プラスチック微粒子を表面被覆、感光化したコロイドを製版材料として応用することも行なったが、被覆剤、修飾剤、およびプラスチック粒子自体の3者のうち一つだけに作用する処理プロセスの探索に手間取り、年度末までに報告可能な成果を挙げるには至らなかった。
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