研究課題のうち、「ホスト・ゲスト化学」については、イソポリ酸陰イオンや金属ハロゲン化物陰イオンがハイドロタルサイト型層状金属水酸化物Mg_2Al(OH)_6NO_3(I)の層間に入る過程ならびに目的生成物の熱による分解過程を調べた。例えば、(I)をNaVO_3水溶液(pHを4.5に調整)中で攪拌後、洗浄・乾燥したものの赤外線吸収スペクトル測定や粉末X線回折測定により、層間に導入されたバナジウム種はデカバナジウム酸陰イオンV_<10>O_<28>^<6ー>であることが判明した。そして陰イオンは、そのC_2対称軸が層に垂直となるような配向をとっている。層間に導入されたV_<10>O_<28>^<6ー>は、473Kまで安定であるが、573〜623Kではバナジウム酸重合体〔VO_3〕_n^<nー>に転化する。623〜673Kでは層状水酸化物の構造ではなくなり、MgO構造となり、873K近傍では層間にあったバナジウム種はMgOと反応してdーMg_2V_2O_7を与えることが判った。さらに電子常磁性共鳴測定により、加熱に伴なうバナジウムの価数の変化についての知見を得た。 層間には、NiCl_4^<2ー>のような金属ハロゲン化物陰イオンを導入することもできる。この陰イオンは例えば臭化ブチルとハロゲン交換反応をすることができる。電子スペクトル測定により、ハロゲン交換前後のNiは四面体構造をとり、それぞれCl^ー、Br^ーが配位子となっていることが判明した。 研究課題のうち、「触媒作用」については、層間にCl^ーやNiCl_4^<2ー>陰イオンをもつハイドロタルサイト型層状金属水酸化物の触媒作用について調べた。すなわち、これらの層状化合物を触媒に用いると塩化ベンジルと臭化ブチルとから臭化ベンジルを容易に得ることができる。この反応における溶媒の効果や、アルキル基の違いによる反応の速度の違いが明らかになった。
|