研究概要 |
1.カテコ-ルジオキシゲナ-ゼモデル錯体に関する研究。 非ヘム鉄錯体による芳香環の酸素化開環反応の研究を展開する中で,報告者が開発した錯体系の中間錯体(カテコ-ル配位錯体)を初めて単離し,その構造に関する検討を行った。単離された錯体は2種類に分期される。1つはFe(Cat)(py)_2Clであり,他はFe(cat)(py)Cl_2である。この錯体の固体での構造をX線吸収スペクトルと結晶解析で行い,また,溶液中の構造についてX線吸収スペクトル,電子スペクトル,および, ^1HーNMRスペクトルを中心に解析を試みた。結晶解析が可能な単結晶は未だ1種類しか得られておらず,現在解析中である。粉末状の錯体のX線吸収スペクトルの結果は,五配位錯体,O,N,Clの配位錯体であることを示し,元素分析の結果と一致した。一方,溶液中の構造については,溶媒による構造変化が観測された。特にNMRとよれば,ピリジン中において,Clとピリジンの配位子交換と,異った錯体間の平衡状態が明確に観測された。 2.モノオキシゲナ-ゼモデル錯体に関する研究。 飽和炭化水素やオレフィンや芳香環のCーH結合を活性化し,官能基化する方法の一つとして,カテコ-ル鉄錯体を触媒とし,分子状酸素を酸素源とする酸素化を開発した。このモノオキシゲナ-ゼ型酸素化反応においては,還元剤の存在が重要であるが,ヒドロキノン類を還元剤とする新しい米を開発し,芳香環の水酸化,シクロヘキセンのようなオレフィンの水酸化とカルボニル化,シクロヘキサンやアダマンタンのような飽和炭化水素の水酸化とカルボニル化を実現し,最適条件の検討を行った。興味深い結果としては,非ヘム鉄系でもFe=0種が活性種と考えられる結果が得られたことである。メタンモノオナジゲナ-ゼモデルへの発展を期待している。
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