研究概要 |
本研究では、6,6'ービス(アシルアミノ)ー2,2'ービピリジンのアシル部位に新たな置換基を導入することにより錯体機能の向上、あるいは新たな機能の発現を試みた。 1.錯体部分の機能の向上を目的として、6,6'ービス(置換ベンゾイルアミノ)ー2,2'ービピリジンを配位子とするCo(II)錯体[Co(babp)]のベンゾイル基に置換基を導入し、電気化学的性質、酸素活性化能、酸素錯体形成能、酸素酸化能への置換基および軸性配位子の影響を比較検討した。酸素活性化能に関して、軸性配位子が置換基よりも大きな影響を及ぼし、2,6ージーtーブチルフェノ-ルから対応するキノンへの酸素酸化反応では、いずれの場合も[Co(salen)]よりも高い選択性、耐久性を示した。 また、[Ni(babp)]誘導体に関してオレフィンのエポキシ化に対する触媒活性を検討し、ベンゾイル基のパラ位にtーBu基を導入して錯体の溶解性を向上させることによって、錯体部分の酸化触媒能をはじめて発現させることができた。 2.異種機能ユニットのN_2O_2型平面正方錯体への導入による新たな機能の付与の試みとして、錯体に長錯アルキル基を導入して分子間配列の制御を試み、複合機能性錯体への展開を図った。アシル部位に長錯アルキル基を導入した配位子およびその各種金属錯体を新たに成合し、錯体の固相での配向と物性および熱的性質に対しアルキル錯長および中心金属が及ぼす影響を検討したところ、アルキル錯の長いもののCu(II)解離型錯体においては偏光を示す中間相が認められることを見いだした。 一方、dabpのアミノ基部分にアミド結合でアミノ酸を導入した配位子を新たに合成しその錯形成を検討したところ、アミド結合が容易に加水分解することを見いだした。また、反応系にメタノ-ルを加えると、メタノ-ルの含有率が上がるに連れて反応速度が劇的に加速し、アミノ酸エステルが生成することが明かとなった。この反応は、金属イオンをトリガ-とするアミノ酸、生理活性ペプチド放出系等として今後の応用が期待できる。
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