研究概要 |
本研究では、複雑な化合物の合成や分子認識を研究する上で不可欠な立体配座解析を,分子力場計算を用いて克服し、新しい合成中間体の設計や分子認識部位の解明を行うことを目的としている。 <渡環的DielsーAlder反応を利用したステロイド骨格の合格>___ー:渡環反応によるステロイド合成では、中大員環化合物の効率的な合成法の開発が必要である。保護したジシアノヒドリン1__ーのジアニオンとC_2対称を有するハロゲン化ジアリルとの閉環反応により一挙に14員環、18員環化合物が得られることを見いだした。次に、14員環化合物2__ーを用いたジアスレオ選択的、エナンチオ選択的な渡環的DielsーAlder反応の検討を行った。その結果、endo補正項を導入したab initioーMM2遷移状態モデルを用いた理論計算により、渡環的DielsーAlder反応の立体選択性が予測できることが明らかになった。 <ネオカルチノスタチン(NCS)クロモファアの合成>___ー:NCSクロモファアは強い抗癌作用を示し、その活性発現因子はバ-グマン反応で発生するビラジカルであるとされている。このビラジカル発生機構を分子レベルで解明するため、分子力場計算を用いたコンホメ-ション解析に基づき設計した12員環エ-テル3__ーの渡環的[2,3]ーWittig転位を基盤として、モデル化合物4__ー,5__ーを合成し、ビラジカルが発生することを確認した。さらに、DNA切断活性について、モデル化合物で検討したが活性は得られず、NCSのナフト-ルやフコサミン部位の重要性が明らかになった。 <ペリプラノンJの合成>___ー:ペリプラノンJは最近発見されたヤマトゴキブリの性フェロモンで、単離量が少ないことから平面構造が提唱されているに過ぎなかった。そこで、実際にペリプラノンJの合成及び生理活性試験を行った結果、提唱されているペリプラノンJの構造には誤りがあり、真の構造は二重結合の異性体であることが明らかになった。
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