研究概要 |
本研究ではコンピュ-タを用いた理論計算を複雑な有機化合物に応用することにより、合成中間体の設計や分子認識部位の解明に役立つ新たな予測法を開発する。さらに、理論計算と実験の両面からこの予測手法の正当性を検討していくことを目的としている。 本研究期間において以下のことを達成した。系統的方法やモンテカルロ法を利用した初期配座発生法と分子力場計算による構造最適化を組み合わせることにより自由度の高い合成中間体の配座解析法を確立した。また、MM2遷移状態モデルを用いたエノラ-トのプロトン化、[2,3]ーWittig転位反応、DielsーAlder反応の立体選択性の予測に成功した。これらの新しい計算手法を生理活性天然物の合成に応用し、特異なDNA切断機構から注目を集めている制がん性抗生物質、ネオカルチノスタチンクロモフォア型のモデル1およびエスペラミシン型のモデル化合物2の合成を行い、1、2からのビラジカル発生を確認した。抗発ガン作用から注目を集めているサルコフィト-ルA3の合成を達成した。また、5員環エノラ-トのプロトン化を基盤とするステロイドCD環4のトランス立体化学の構築法について検討した。ステロイド等の多環式化合物の新規合成法として、中・大員環化合物5の渡環的DielsーAlder反応についても検討を行った。
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