研究概要 |
本年度は,1ーメトキシー3ーフェニルチオプロペンphs(R)CH=CHOMeとオキシランRCHーCHRとから容易に導けるγ'ーヒドロキシーγーメトキシアリルスルフィドRCH(OH)CH(R)ーC(R)(SPh)CH=CHOMeの立体選択的MislowーEvans転位につき,おもに研究を行なった。このγ'ーヒドロキシアリルスルフィドを含水ジオキサン中,NaIO_4で処理すると,スルフィドのスルホキシドへの酸化と,生成したアリルスルフィドのMislowーEvans転位,ついで転位生成物の加水分解がひきつづいて起き,δーヒドロキシーα,βー不飽和アルデヒドRCH(OH)CH(R)ーC(R)=CHCHOが収率よく得られた。反応混合物を詳細に分析したところ,E体とZ体は95対5以上であった。1ーメトキシー3ーフェニルチオプロペンは,transープロペナ-ル陰イオン等価体(〓CHO)として働いていることがわかる。この選択性の発現理由を調べるために,γ'位のヒドロキシル基とγ位のメトキシ基の影響を調べた。まずγ'位のヒドロキシル基の効果を調べるために,メチルエ-テル体およびシリルエ-テル体RCH(OR^1)CH(R)ーC(R)(SPh)CH=CHOMe(R^1=CH_3 S_1Me_2ーtーBu)を合成し,酸化的加水分解を行なった。これらの場合には,E体とZ体は約60:40であった。つぎにγ位のメトキシ基が水素に置き換わった化合物RCH(OH)CH(R)ーC(R)(SPh)CH=CH_2を合成し,このものをMislowーEvans転位させた。この場合にも,γ'位にヒドロキシル基が存在するにもかかわらず,E体とZ体は60:40であった。つまり,γ'ーヒドロキシーγーメトキシアリルスルフィドが立体選択的にtransーδーヒドロキシーα_1βー不飽和アルデヒドになるためには,γ'位に水酸基がγ位にメトキシ基が同時に存在しなければならない。
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