研究概要 |
1.近年のタンパク質化学の目覚ましい進展に伴い、タンパク質群の構造および機能解析は著しく進んだ。しかし、その殆んどは可溶性タンパク質についてであり、細胞膜タンパク質に関しては非常の遅れているのが現状である。本研究では、膜タンパク質をその活性を失う事なく細胞膜よりリポソ-ムに直接再構成する手法について検討した。 2.人工境界脂質(DDPC)の合成法を確立し、その境界脂質としての機能を、DSC,ESR,ケイ光偏光解消法および重水素NMR法により明らかとした。 3.種々のDDPC含有DMPCおよび卵黄レシチンリポソ-ムとヒト赤血球とを相互作用させ、細胞からリポソ-ム側へ転移してくる膜タンパク質量とリポソ-ム組成との相関を調べた。その結果、DDPCを添加することにより、タンパク質の転移効率が有意に増大することが明らかとなった。その際、赤血球膜中の膜酵素の一種であるアセチルコリンエステラ-ゼが、その活性を90%以上保持したまま、リポソ-ムに再構成されることも明らかとなった。 4.癌細胞(放射線誘導癌細胞・Balb RVD)から抗原提示タンパク質を直接リポソ-ムに移行、再構させリポソ-ムワクチン作成し、マウスを使った実験で高い抗腫瘍効果の発現に成功した。この手法は、従来法と比較して抗原性タンパク質の化学的変性も起こらず、より高い免疫能が得られることも実証しており、新しいワクチン調製法として今後おおいに展開が予想される。
|