研究概要 |
今年度の研究経過および得られた成果を以下に列記する。 1.末端構造の揃ったポリイソブチレン(PIB)試料について、重量平均分子量M_wが224(4量体)から1.79×10^6の範囲で,良溶媒であるnーヘプタン中25.0℃における固有粘度[η]を求めた。その結果,排除体積効果がないとみられる7.9×10^2【less than or similar】M_w【less than or similar】1.9×10^3で,[η]の値はΘ溶媒であるイソ吉草酸イソアミル(IAIV)中25.0℃での値とよく一致すること,また,排除体積効果が明確に現れるのはM_wが約2.4×10^3以上であることがわかった。前者の結果はnーヘプタン中のPIB非摂動鎖が,IAIV中のPIB鎖に対してすでに得られているものと同じらせんみみず(HW)鎖,すなわち,同じモデル定数の値を用いたHWモデルにより記述できることを示す。さらに,これらのモデル定数の値より,排除体積効果の出現しはじめる分子量M_w(【less than or similar】2.4×10^3)は還元長(鎖の静的剛直性パラメ-タを単位とする鎖長)約7.8に相当することがわかる。ラセモダイアドの分率f_rが0.59のアタクチックポリスチレン(aーPS)について,ベンゼン中の[η]から同様の方法で以前に決定した値は約5.5である。今回決定したPIBの値はaーPSに対する値と同程度であるが,それより大きい。以上の成果は第40回高分子討論会で発表する予定である。 2.f_rが0.59のaーPSおよびf_rが0.79のアタクチックポリメタクリル酸メチル(aーPMMA)についてすでに得られているΘ溶媒系に対するX線小角散乱(SAXS)デ-タより求めた第二ビルアル係数A_2の結果を整理したところ,Θ状態においてもA_2はM_wが数万以下では正の値を持ち,特にオリゴマ-領域では非常に大きい値を持つことがわかった。ただし,これらのA_2のデ-タには誤差が無視できないため,同じ高分子一溶媒系について光散乱法を用いて精密なデ-タを得,A_2の分子量依存性を明らかにすることを計画している。このようなオリゴマ-溶液の光散乱測定では,密度散乱および異方性散乱の影響の除去が問題となる。そこで,本年度の研究では密度散乱および異方性散乱に対して理論的に考察し,光散乱デ-タの解析方法を確立した。 3.f_rが0.59のaーPSについて,良溶媒中における平均二乗回転半径〈S^2〉を求めるためのSAXS測定は現在進行中である。この結果も第40回高分子討論会で発表する予定である。
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