本研究では、立体規則度の揃ったアタクチックポリスチレン(ラセミ率f_r=0.59)、アタクチックポリメタクリル酸メチル(f_r=0.79)、および末端構造の揃ったポリイソブチレンについて極低分子量オリゴマーから高分子量にわたる希薄溶液物性を調べ、それらに対する排除体積効果に関して次の知見を見た。 1)回転半径膨張因子alpha_Sに対して準二定数理論が成立する。すなわち、alpha_Sはらせんみみず(HW)鎖モデルに基づく山川-stockmayer-島田理論で定義される鎖の固さの影響を含む(分子内)修正排除体積パラメータ〓のみの関数となる。鎖の固さの影響のため、alpha_Sに対する従来の二定数理論は成立しない。この鎖の固さの影響は分子量が10^6以上まで及ぶ。 2)粘度半径膨張因子alpha_<eta>についても、alpha_Sの場合と同様、従来の二定数理論は成立せず、準二定数理論が成立する。また、alpha_<eta>に対する鎖の固さの影響は分子量が10^6以上まで及ぶ。THETA状態における固有粘度〔eta〕_<THETA>に素抜け効果がなければ、alpha_<eta>にも素抜け効果は現れない。 3)第2ビリアル係数A_2中の貫入関数PSIはalpha_Sのみの関数としては表せず、二定数理論および準二定数理論いずれも成立しない。つまり、PSIは鎖の局所形態と固さに大きく依存する。PSIは〓のみならず分子間修正排除体積パラメータを含む関数であり、alpha_Sの関数としてのPSIは分子量と排除体積強度に別個に依存する。このPSIの挙動はHWモデルに基づく山川理論によって半定量的に説明できる。 4)低分子量領域のA_2に対しては、THETA溶媒中および良溶媒中いずれにおいても鎖の末端効果の影響が大きく、その分子量依存性はこの効果を考慮した山川理論により定量的に表せる。A_2に対する鎖の末端効果はかなり高分子量まで残り、分子量が10^5程度まで無視できない。
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