本年度は流動パラフィン中でpーアセトキシ安息香酸を重合することによって得られるポリ(pーオキシベンゾイル)ウィスカ-の生成機構の解明を中心に研究した。特にウィスカ-生成に対する重合温度、モノマ-濃度の影響を詳しく検討し、ウィスカ-長の制御の可能性を解明しようとした。重合温度は、生じるオリゴマ-の生成速度と生成オリゴマ-の析出速度に影響する。この温度依存性は、それぞれ温度に対し正と負であり、このかねあいがウィスカ-の生成に大きく影響すると考えられる。そこで種々の条件で作成したウィスカ-の平均体積と生成ウィスカ-の収率から、ウィスカ-の数を評価した。その結果、ウィスカ-の生成数は、低モノマ-濃度では315℃付近に極大をもつ温度依存性を示した。またモノマ-濃度を大きくするとウィスカ-の数は極大が低温側にずれる傾向を示した。そして重合温度の低下とともにウィスカ-形態からスラブ形態へと変化した。一方、ウィスカ-の熱的性質の評価から推察されるウィスカ-の結晶性は高温程向上する傾向にある。また形態観察によって評価されるウィスカ-の枝別れは重合温度の上昇と共に少なくなる傾向にある。これらの結果から長くて均一なウィスカ-は低濃度かつ高温で重合することによって達成されることが解明された。 また、ウィスカ-の実際的な利用の観点からウィスカ-生成の初期段階で異種モノマ-を添加することによってウィスカ-表面に化学結合した共重合体を付着させることに成功した。これは従来われわれが提案していたウィスカ-生成の初期段階での活性末端をもったオリゴマ-結晶の積層機構を支持するとともに複合材料用の接着性のよい補強材として高分子ウィスカ-が利用できる道を開いたものとして注目されよう。
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