適当な置換基を導入し、生長ラジカルを長寿命化させ、ESRを用いて重合機構を明らかにする目的で、いくつかのイタコン酸誘導体およびその類似構造モノマ-を合成し、その重合挙動を検討した。 Nーフェニルイタコナミン酸メチル(PIM)のジメチルアゾビスイソブチレ-ト(MAIB)による50℃での重合では、その速度(k_p)は次式で示される。R_p=k[MAIB]^<0.5>[PIM]^<1.6>。ESRによる生長ラジカルの観測に成功したのでその濃度を求め、生長(k_p)および停止(k_t)速度定数を決定した。55℃で、k_p=8.2〜12l/mol・s、k_t=1.9〜4.2×10^5l/mol・s。モノマ-濃度と共にk_pは増加し、k_tは減少する。Nー(2.6ージメチルフェニル)イタニミドはイタコン酸の環状誘導体である。THF中、50℃で生長ラジカルのESR観測が可能であった。k_p(24〜27l/mol・s)はイタコン酸エステルより数倍大きいが、k_t(2〜3.8×10^5l/mol・s)はよく似ている。 イタコン酸エステルと類似構造を有するαーベンゾイルオキシメチルアクリル酸エチルを合成し、ベンゼン中60℃で重合した。極めて重合活性が高く、高分子量のポリマ-が得られる。生長ラジカルもESRによる観測が可能であるが濃度が低い。ESRを用いて決定した値は、k_p=990l/mol・s、k_t=2.6×10^6l/mol・sである。イタコン酸エステルとは、反応点から離れたカルボニル基の位置が少し異なるだけで、このようにk_p、k_tが大きく変化するのは興味深いことである。 その他、キャプトデイティブ置換ビニリデンモノマ-の自然熱重合開始機構、イタコン酸ジエチルの重合に及ぼすSnCl_4の効果などをESRを用いて検討した。
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