植物細胞培養法による有用物質の生産に関して、光の与える影響に着目し、光の照射を制御することによって、細胞の増殖と二次代謝産物の生産とを高水準に維持することを目的とした。具体的には、昨年度の知見を基づいて、コ-ヒ-細胞によるカフェインの生産における光の効果を詳細に検討し、その効果を効率的に発揮出来るようなフォトバイオリアクタ-とその設計指針を確立した。今年度の成果の主要な点を列記する。 (1)光照射がコ-ヒ-細胞の2次代謝産物生産に与える影響 長期的連続光は細胞の増殖と生産を著しく抑制するため、間欠的光照射によって長期的に生産と増殖が高いレベルで維持出来ることを示した。また光活性化の波長依存性から、光レセプタ-としてフィトクロムが関与している可能性が示唆された。さらに、代謝酵素活性をin vitroで測定した結果、光照射によって、少なくとも7ーメチルキサンチン以降の酵素活性(量)が増大していることも明らかとなった。 (2)細胞あたりの光吸収速度の推算と増殖速度論 フォトバイオリアクタ-の設計指針を与えるために、細胞懸濁相の透過光と反射光の比率を化学光量計により求める方法を開発し、細胞の吸収断面積と散乱断面積を推算した。さらに光と増殖の関係を定式化した。 (3)生成物分離吸着カラムを備えたコ-ヒ-細胞培養のためのリアクタ-の開発 疎水性吸着剤充填カラムの使用により、生成物阻害を除去する培養システムを提案し、生産性の向上を示した。 (4)固定化培養細胞を用いた気泡塔型フォトバイオリアクタ-の開発 生産開始までのラグタイムは懸濁培養に比べて長くなったが、細胞の増殖と高い生産性を示すことができた。
|