研究概要 |
水田は温室効果ガスの一つであるメタンの主要な発生源として注目されており,本研究では有機物の種類と量および水管理の相違が,田面水あるいは水稲作を通して放出されるメタンの量と,土壌中上気泡として保持されるメタンの量に及ぼす影響について比較検討を加え、またこれをメタンガスの炭素同位体比δ^<13>C値をFinnigan Mat社のDelta GC/C/MSを用いて測定した。その結果を要約すると次のようである。 1)湛水期間中の水稲栽植区でのメタン放出量は,水稲を栽培している対照区と比較して,第一年目も第二年目も稲わち全量区が1.8倍、2.1倍ともっとも多く,堆肥全量区は1.3倍,0.9倍でそれほど多くなかった。栽植区と無栽植区のメタン放出量の比較では,栽植区が多かった。土壌中のメタン保持量は,無栽植区が栽培区に比べて多かったが,各有機物処理では,稲わち区が顕著に多く,堆肥区では無有機物区と大差がなかった。水管理の試験では,透水がメタン放出に与える影響については,稲わち添加によりメタン放出を透水が促進する傾向が示されたが,稲わち無添加では透水がメタン放出を抑制する傾向が認められた。間断潅水のメタン放出に及ぼす影響は認められなかった。土壌間の違いでは,灰色低地土からのメタン放出量は黒ボク土の2〜8倍に達した。土壌への酸化鉄の添加はかなりメタン放出を抑制する傾向が示された。 2)稲わち区で捕集した土壌ガス中のメタンの炭素同位体比δ^<13>C値を測定しつつあり,現在までの分折総量では,水稲栽植区のメタンのδ^<13>C値が無栽植区のそれに比べて高い傾向が示されている。
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