研究概要 |
ヒト血小板情報伝達系において、コラ-ゲンがアゴニストとして血小板を刺激した場合には、膜リン脂質よりのアラキドン酸の遊離そしてトロンボキサンA_2への転換が最も重要なイベントであることを明らかにしてきた。この反応に関わる酵素としてホスファチジルイノシト-ル特異的ホスフォリパ-ゼCによって生成したジアシルグリゼロ-ル(DG)を水解するDGリバ-ゼの純化を本年度は試みた。 ヒト血小板の膜画分よりnーヘプチルーβーチオグルコシドを含む緩衝液で酵素を可溶化した後、トヨパ-ルーHWー55カラム,硫安沈澱、DEAEトヨパ-ル650カラムさらにはHiLoad26/60Superdex200カラム、カルシウムアパタイトカラムなどによって精製を行った。本酵素は非常に不安定であり、完全純化は困難であった。しかし、1ー[1ー^<14>C]ーステアロイルー2ーアシルDGを基質として酵素的性質を調べたところ、至適pHは7〜8であり、酸性域ではほとんど活性はみられなかった。ついで、血小板活性化において外部情報の初期の伝達目標である細胞内Ca^<2+>濃度との関係を調べたところ、Ca^<2+>濃度はDGリパ-ゼ活性に対しては無関係であった。これらのことはDGリパ-ゼは情報伝達系の初期における細胞内低Ca^<2+>濃度の条件でも作用しうるものであることを示唆するものである。 最終的にアラキドン酸が遊離されるために、DGリパ-ゼの生成物である1ーリゾー2ーアラキドノイルモノアシルグリセロ-ルのモノアシルグリセロ-ルリパ-ゼによる水解が必要となるが、この酵素の純化及び性質に関しては次年度以降に取り組む計画である。
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