研究概要 |
ヒト血小板情報伝達系において、コラ-ゲンがアゴニストとして作用する場合には、膜リン脂質よりのアラキドン酸の遊離そしてトロンボキサンA_2への転換が最も重要なイベントであることを明らかにしてきた。この一連の反応に関わる酵素系として、ホスファチジルイノシト-ル特異的ホスフォリパ-ゼC(PLC)、ジアシルグリセロ-ルリパ-ゼ(DGL)、モノアノルグリセロ-ルリパ-ゼ(MGL)が関係していることを明らかにすることを本研究の目的とした。 ヒト血小板可溶画分より2種類のPLCを純化することに成功した。これらは146KDaタンパク質の3量体(PLCーI)及び2量体(PLCーII)であった。PLCーI及びIIともにラットのPLCーβ、γ_1、γ_2及びδに対する抗体のうち、PLCβとδに弱く交差した。このことはPLCーI及びIIが新しいアイソザイムであることを示唆している。ホスファチジルイノシト-ルー4,5ービスリン酸に対して両酵素ともに中性付近で作用した。ホスファチジルイノシト-ルに対しては酸性から中性域で作用した。このことは両酵素ともに生理的条件で作用しうることを示している。また、血小板活性化における外部情報の初期の伝達目標である細胞内Ca^<2+>濃度との関係を調べたところ、PLCーIIはCa^<2+>がナノモル濃度レベルで作用しうることを明らかにした。このことはPLCーIIは血小板活性化の初期に活躍しうる酵素であることを示唆している。 ついでDGLの純化を試みた。本酵素は非常に不安定であるがゆえに部分精製にとどまったが、主な酵素的性質としては中性付近でかつ低Ca^<2+>濃度で作用しうることを明らかにした。 アラキドン酸が遊離される最終段階に作用するMGLの純化及び性質に関しては次年度以降に取り組む計画である。
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