高圧処理による生体高分子物質の構造変化に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02453127
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 林 力丸 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (90027186)
• 研究分担者: 岡本 巳恵子 就実短期大学, 家政科, 助教授 (90152355)
• キーワード: 高圧効果 / 高圧処理食品 / 加圧食品 / 生体高分子 / 加圧加工 / 加圧殺菌 / 加圧調理

研究概要

生体材料や生体に対する圧力効果を具体的に把握し、これらの天然構造の解明に資すとともに、加圧食品の基礎を構築することを目的にし、以下の成果を得た。
1.光学窓付き高圧容器を用い、各種タンパク質やデンプンの加圧下(1000気圧以上)での変化を直接解析し、変性あるいは糊化の可逆的変化を観測した。一方、熱変性も測定し、圧力と熱効果の相関関係を明らかにした。
2.食肉や植物組織や酵母を材料にし、細胞膜、細胞内顆粒の構造変化の圧力依存性を測定し、圧力の生体材料や生体組織への影響を解析した。その結果、圧力の影響はタンパク質と脂質の複合体が受けやすく細胞内顆粒は1000気圧以下で崩壊すること、デンプン顆粒は圧力抵抗性が高く、加温と圧力の併用が効果的であった。
3.アミノ酸残基の状態識別をするため、圧力下でカルボキシメチル化法とピリジルエチル化法によるSS結合の状態を解析し、リボヌクレア-ゼなど数種のタンパク質の立体構造の特徴を明らかにした。
4.約20種のデンプンの圧力と熱に対する影響の相関関係を解析し、A型とB型の識別を明らかにした。
5.加温して加圧する場合におこる食品特有のメイラ-ド反応や加水分解反応などの圧力依存性を解析し、これらの反応が抑制されることを明らかにした。
これらの成果は食品の加圧加工、加圧殺菌、加圧保存の有効性に科学的な基盤を与えるものと評価できる。

研究成果

• [文献書誌] 大森 丘,林 力丸: "Effect of high pressure on the protease activities in meat" Agric.Biol.Chem.55. 357-361 (1991)
• [文献書誌] 重久 保,林 力丸: "Effect of high hydrostatic pressure on characteristics of pork slurries and inactivation of microorganisms associated with meat and meat products" Int.J.Food Microbiol.12. 207-216 (1991)
• [文献書誌] 岡本 巳恵子,林 力丸: "High pressure use for proteolytic digestion of food proteins:The selective elimination of βーlactoglobulin in bovine milk whey concentrate" Agric.Biol.Chem.55. 1253-1257 (1991)
• [文献書誌] 玉岡 徹,林 力丸: "High pressure effects on Maillard reaction" Agric.Biol.Chem.55. 2071-2074 (1991)
• [文献書誌] 朝賀 昌志,林 力丸: "Activatioin of polyphenoloxidase in pear fruits by high pressure treatmnt" Agric.Biol.Chem.55. 2439-2440 (1991)
• [文献書誌] 林 力丸: "High pressure in food processing and preservation:Principle,application and development" High Pressure Research. 7. 15-21 (1991)
• [文献書誌] 林 力丸(編著): "高圧科学と加圧食品" さいえん出版, 460 (1991)
• [文献書誌] 林 力丸: "高圧流体技術" 丸善株式会社, 354 (1992)