1.EVA及びLDPEフィルムに対して20Mradまでの低線量の電子線を照射すると、ある特定香気成分に対してのみ収着抑制効果が発現することが判明した(20Mrad-LDPEではオクタン、エチルヘキサノエートで収着が抑制されたものの、逆にオクタノール、オクタナールでは収着促進となった)。本抑制効果発現は一部フィルム内に導入された架橋ー緩やかな三次元網目構造化に基づいていることをすでに前年度までに報告してきた。そこで、化合物間での収着挙動の相違を香気成分及びフィルム双方の分子凝集エネルギー密度の差に基づいて熱力学的に解析したところ、Fedors理論から算出したSP値(溶解度パラメーター)が本効果 現に深く関与していることが判明した。すなわち、電子線照射フィルムに対する香気成分の収着の増減は、香気成分と照射フィルムのSP値の比1.09を境として明瞭に二分され、その比よりも小さい香気成分に対してのみ収着抑制効果が発現した。従って、電子線照射によるEVA及びLDPEフィルムでの香気成分に対する収着の抑制は、フィルムと香気成分間の分子相互作用力に基づいて発現していることが初めて明らかとなった。 2.フィルム表面での香気成分との親和性ー分子相互作用力が収着に深く関与するとの知見をもとに、LDPEフィルム表面にアクリル酸モノマーをUVグラフト化し、表面極性化フィルムを作製した。この結果、0.70mol%アクリル酸グラフト化フィルムに対して低極性化合物のみ収着が抑制され、本概念ー本面のみの極性化がシーラント材として使用されている内面材の有効な収着低減化法であると判断された。今後は親和性を数値化し、目的とする香気組成に基づき表面極性度を制御し、香気成分を収着し難い内面フィルムの設計を行っていく。
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