研究概要 |
木材は天然の優れた複合材料であるが,「燃える」「腐る」「寸法が狂う」といった欠点がある。そこで木材の持つ長所を残しつつ欠点を改良するために無機質と木材との複合化を検討した。 まず、金属アルコキシド・アルコ-ルの組み合わせが(1)テトラメトキシシラン(TMOS)・メタノ-ル(2)テトラエトキシシラン(TEOS)・エタノ-ル(3)テトラnープロポキシシラン(TPOS)・nープロパノ-ルである3種の溶液(モル比1:1)と触媒である酢酸(モル比0.01)を混合した溶液を調製した。木材細胞壁中にある結合水を利用して、ゾル-ゲル法により壁中に選択的にSiO_2ゲルを生成させることで,多孔特性を維持した無機質複合化木材の開発を試みた。その結果、SiO_2ゲルは細胞壁内に均一かつ選択的に生成し,結合水量の多いものほど生成SiO_2ゲル量が多くなることが判明した。また、SiO_2ゲル生成量が多いものほど寸法安定性及び難燃性能が向上することが判明した。しかしながら,チタン酸イソプロピル(TPT)を用いた同様の実験では,TiO_2ゲルは細胞壁内には生成せず内腔のみであった。これは金属アルコキシドの加水分解速度の差によるもので,細胞壁内に無機物ゲルを生成させるには、加水分解速度が遅く、モル体積が小さくかつ膨潤能の大きいメタノ-ル・エタノ-ルを用いたTMOS,TEOSが適当であると結論付けられる。 また,木材と3ーイソシアネ-トプロピルトリエトキシシラン(3ーIPTEOS)との反応を試み置換基末端にエトキシシランを有する化学修飾木材を調製した。引き続き,ゾル-ゲル法を応用しTPTによる化学修飾木材の無機質複合化を試みた結果、高い寸法安定性を有しかつ難燃性の高い複合材料であることがわかった。また、SEMーEDXA観察により,細胞壁内に3ーIPTEOSが,内腔部にTiO_2ゲルが生成し、細胞壁界面ではく離がないことから、無機物が細胞壁と結合していることが推察された。
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