研究概要 |
木材は,天然の優れた複合材料であるが、「燃える」「腐る」「寸法が狂う」といった欠点がある。 そこで,木材の持つ長所を残しつつ欠点を改良するため、ゾル-ゲル法を応用して、無機質と木材の複合化を検討してきた。 本年度は.特に超音波処理を複合化過程に取り入れ,その効果について検討した。 その結果、 1.超音波処理により,無機質(SiO_2ゲル)の取り込み量が、15ー30%増加し.複合化のための含浸処理時間を短縮することができた。しかしながら,超音波の周波数(28,45,100KH_3)の違いによる取り込み量の差は認められなかった。 2.超音波処理によるSil_2ゲルの取り込み量の増加に伴って,寸法安定性及び難燃性の向上がみられた。さらに. 3.調湿試片より調製した無機質複合化木材と飽水試片より調製した無機質複合化木材でのSiO_2ゲルの分布を.SEMーEDXA分析した結果,前者は、SiO_2ゲルが細胞壁内に,後者は.主に細胞内腔に分布していた。 これらの無機質複合化木材について,寸法安定性及び難燃性を評価した結果,細胞壁内に生成したSiO_2ゲルが.内腔に生成したゲルよりも寸法安定性・難燃性の向上により効果的であることが判明した。 従って、本研究で用いた手法、特に、調湿試片より調製する無機質複合化法が、木材の長所でもある軽さ、多孔質特性を維持しながら,木材に寸法安定性・難燃性を効果的に付与できる可能性を示唆することができたといえる。 今後は、生物劣化抵抗性についても,トポ化学的考察を加えていきたい。
|