冷蔵中における魚肉の軟化は、筋細胞周辺の脆弱化によるものと考えられるが、その分子機構を明らかにするためには、筋細胞周辺のコラーゲンの分子種を同定することが必要である。そこで、コイ筋肉中の主要コラーゲンであるI型とV型コラーゲンをそれぞれ、DEAE-セルロース、DEAE-トヨパールおよびDEAE-セルロース、SP-フラクトゲルにより精製した。次に、ウサギを用いてこのI型およびII型コラーゲンのポリクロナール抗体を作製した。各血清画分をさらにアフィニティー精製し、特異抗体を作製した。その後、このような方法で作製した特異抗体を用いて、免疫組織学的に筋肉組織における両コラーゲンの分布を検討した。その結果、抗I型コラーゲン抗体は、筋隔膜に強い交叉性を示したが、筋内膜における交叉性は低かった。これに対し、抗V型コオラーゲンでは、筋隔膜における交叉性はI型抗体とくらべてはるかに低かったが、筋内膜に強い反応が認められた。 以上の結果より、軟化に対応して構造が崩壊する筋内膜コラーゲン線維は、主としてV型コラーゲンより構成されていることが明らかとなった。 ハマチ、マダイ、フグ、ニジマスなどを用いて各鮮度段階(死後72時間まで)における種々の筋肉タンパク質の電気泳動を試みたが、各段階における特異なパターンを検出することはできなかった。また、HPLCによってニジマス筋肉の軟化に伴うコラーゲン分解物の検出を試みたが、成功には至らなかった。
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