カルシウム情報伝達機構の研究に有用な海洋生理活性物質の探索

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02453138
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 小林 淳一 北海道大学, 薬学部, 教授 (90221241)
• 研究分担者: 繁森 英幸 北海道大学, 薬学部, 助手 (70202108) ; 石橋 正己 北海道大学, 薬学部, 助教授 (90212927)
• キーワード: カルシウム情報伝達 / 海洋生理活性物質 / 筋小胞Ca遊離促進物質 / アクトミオシンATPア-ゼ活性化物質 / カルモデュリン阻害物質 / プロティンキナ-ゼC活性化物質 / 海綿 / ホヤ

研究概要

カルシウムイオンは、細胞内情報伝達においてセカンドメッセンジャ-として機能しており、哺乳動物の細胞内カルシウム情報伝達に関与する重要な蛋白質として、カルシウムチャンネル、CaーATPア-ゼ、アクトミオシンATPア-ゼ、カルモデュリン、プロティンキナ-ゼCなどがある。本研究でこの2年間に得られた研究成果としては、筋小胞体のCa遊離促進物質として海綿Penares sp.よりインド-ルアルカロイドPenaresinを、筋小胞体のCaーATPア-ゼ阻害物質として海綿Theonella sp.より環状ペプチドKeramamide Aを、アクトミオシンATPア-ゼ活性化物質として海綿Agelas sp.よりブロモピロ-ルアルカロイドAgeliferin類およびOxysceptrinを、同様の活性物質として海綿Penares sp.よりアゼチジンアルカロイドPeneresidin AとBを、カルモデュリン阻害物質としてホヤEudistoma cf.rigidaよりピロロピリミジンアルカロイドRigidinならびに海綿Theonella sp.より環状ペプチドKonbamideを、プロティンキナ-ゼC活性化物質としてホヤEudistoma cf.rigidaよりマクロリド化合物Iejimalide CとDを、それぞれ単離し、それらの化学構造をNMR,MS等のスペクトルデ-タに基づいて明らかにした。これらの化合物の中でIejimalide CとDは、これらの構造の一部が変化することにより、プロティンキナ-ゼCに対する作用が活性化から阻害作用へと変化するため、プロティンキナ-ゼCの活性発現における機密分子認識を解明するためのtoolとして、これらの化合物は有用であると期待される。

研究成果

• [文献書誌] Kobayashi,J.: "Rigidin,a novel alkaloid with calmodulin antagonistic activity from the Okinawan mraine tunicate Eudistoma cf.rigida." Tetrahedron Lett.31. 4617-4620 (1990)
• [文献書誌] Kobayashi,J.: "Ageliferins,potent actomyosin ATPase activators from the Okinawan marine sponge Agelas sp." Tetrahedron. 46. 5579-5586 (1990)
• [文献書誌] Kobayashi,J.: "Keramamide A,a novel peptide from the Okinawan marine sponge Theonella sp." J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1. 2609-2611 (1991)
• [文献書誌] Kikuchi,Y.: "Iejimalides C and D,new antineoplastic 24ーmembered macrolide sulfates from the Okinawan marine tunicate Eudistoma cf.rigida." Tetrahedron Lett.32. 797-798 (1991)
• [文献書誌] Kobayashi,J.: "A potent actomyosin ATPase activator from the Okinawan marine sponge Agelas sp." Experientia. 47. 301-304 (1991)
• [文献書誌] Kobayashi,J.: "Konbamide,a novel peptide with calmodulin antagonistic activity from the Okinawan marine sponge Theonella sp." J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1050-1052 (1991)