研究概要 |
平成2年度に得られた研究実績について以下に記す。 1.脂環式化合物と複素環式化合物の相互変換に関する研究 当初計画した基質の合成に成功し、反応を詳細に検討した。その結果基質設計に若干の問題点があることが判明し、本項目についてはさらに研究を継続中である。 2.メソ化合物のエナンチオ選択的環開裂に関する研究 本研究の基礎的知見として、単環性及び双環性メソ化合物の環変換反応が効率良く進行することを見い出した(Tetrahedron Lett.,32,515(1991))。本知見は今後計画している不斉誘起反応を大いに確信させるものである。 3.同種・異種カルボニル化合物の分子間反応の研究 (1)芳香族アルデヒドとシクロペンタノンとの異種間の反応が生起し、Wittig反応等価の成績体を与えることが判明した(J.C.S.,Chem.Commun,1990,1538)。 (2)5,6,7,12員環ケトンにおける同種間のアルド-ル,環開裂反応に成功した。本知見を基に、光学活性環状ケトンを基質とする多不斉中心を有する鎖状シントンの効率的合成について検討中である。 4.環変換反応を利用したアコレノンBの立体選択的合成 ビシクロ〔3.3,0〕オクタン骨格によりスピロ〔4,5〕デカン骨格への変換を基盤とするアコレノンBの立体選択的合成に合功した(J.C.S.,Chem.Commun,1990,1778)。本合成ル-トの特徴は、基質設計の段階で必要な置換基,立体化学等を容易に調整後、ダイナミックな一工程の環変換により目的化合物に導く点にある。
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