研究概要 |
1.Aspergillus niger(クロコウジカビ)の産生する新しいタイプのカルボキシルプロテア-ゼについて、種々の化学修飾法により活性中心残基の探索を進めた。この結果、本酵素は水溶性カルボジイミドによるカルボキシル基の修飾によってのみ顕著な失活をおこすことが示され、カルボキシル基の活性発現への関与が確認された。また、還元・カルボキシメチル化リボヌクレア-ゼAを基質として、その特異性を検索し、アスパラギン、アスパラギン酸,グルタミン,グルタミン酸等のカルボキシル側をかなり選択的に切断するという,ペプシン型酵素とは異なる特異性を有することを明らかにした。一方、本酵素の高次構造の研究の一環として、その熱変性特性を解析するとともに、軽鎖を単離し、二次元NMRによりそのほゞ全残基(39個)のプロトンのクロスピ-クのシグナル〓属を行った。さらに,プロプロクタ-ゼcDNAをT7プロモ-タ-を用いたプラスミドに組み込み、大腸菌で発現させ、酸性条件下で活性化し、プロテア-ゼ作用を持つ酵素を得る系を確立した。 2.ヒト胃カテプシンEの中性域における活性の有無を検索し、中性pHにおいても活性を示すこと,また基質特異性がpHによって異なり、中性ではより狭くなることを明らかにし、カテプシンEが中性の生理的pH条件下でも作用しうることを初めて明らかにした。また、カテプシンEがpH5.5〜7.4間でα_2マクログロブリンと作用し、阻害されることを初めて示した。 3.Aspergillus nigerの産生する酸性プロテア-ゼBについて、そのcDNAを単離し、翻訳領域の塩基配列を決定した。この結果、プロテア-ゼBの前駆体プレプロプロテア-ゼBの全一次構造が明らかになった。また、プロ体の大腸菌での発現に成功し、酸性pH下で自己触媒的に活性化することを明らかにした。
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