細菌にはこれまでステロ-ルが存在せずその前駆体であるスクアレンも存在しないと信じられていた。従ってスクアレン合成酵素の存在も全く知られていなかったが、初めてその存在を酵素的に証明した。その酵素の精製を行なったが可溶性酵素に比して精製が困難であったが、安定化に界面活性剤を用いることによって可能であることがわかり、44倍にまで精製することが出来た。しかしながら、それ以上の精製を行なうと活性が低下し、膜酵素的性質をもっている事がわかった。ファルネシル二リン酸に対するKm値は0.4μMであり、動物や酵母のスクアレン合成酵素の値の0.2ー0.4μMの値に近く、酵素分子としてはあまり大きな差はないものと思われる。 新規酵素であるデヒドロスクアレン合成酵素の精製をも行なった。やはり界面活性剤が活性および安定化に関与し、45倍にまで精製した。ファルネシル二リン酸に対するKm値は0.04μMであった。 これらの酵素によって得られるデヒドロスクアレンはアポカロテンに代謝されると予想されたが、前駆体として放射性デヒドロスクアレンを調製して代謝実験を行なったが基質自身が不安定でありはっきりした結論には至らなかった。 一方、スクアレンの運命をZymomonas mobilis菌を用いて調べたところホパノイドに代謝されることがわかった。この代謝酵素のアルコ-ル濃度に対する活性の変化を調べたところ、有為の差が得られなかった。
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