研究概要 |
1.生物環境調節装置(コイトトロン)を用いた実験 生物環境調節装置内で、ダイズをポット植えで十分な光条件下で栽培した。この植物から花芽形成期以後に形成された花芽を全て除去し、この時期の主要なsink器官である花器およびさやの形成を完全に阻止することによって、植物体のsink能を低下させた。 (1)花芽を除去しなかったダイズ(control)植物に比べて、花芽を除去したダイズ(sink-limited)植物においては、個体重、個体当りの葉量、葉面積当たりの葉重そして葉重当たりの葉以外の器官(茎、根、さや)の重さの比、すなわち、source能/sink能比が増加した。以上の結果から、花芽除去によって、ダイズはsink-limited条件下にあったと考えられる。 (2)このsink-limited植物においては、花芽除去後に光合成能が次第に低下し、それに伴って、葉のsucrose含量が増加し、両者の間には負の相関関係が見られた。 (3)また、このsink-limited植物では、光合成能の低下に伴って、RuBPcase活性が大きく低下すること、この低下したRuBPcase活性はCO_2とMg^<2+>付加によって完全に活性化した。 (4)sink-limited植物では、光合成能の低下に伴って、葉のRuBP含量は大きく低下した。 (5)しかし,このsink-limited植物およびcontrol植物の葉のP_1含量は測定ごとに大きく変動し一定の傾向が認められなかった。 以上の結果から生物環境調節装置内で、十分な光条件下で栽培した植物個体において、花芽形成以後の主要なsink器官であるさやの形成を阻止することによって、植物個体がsink-limited状態になり、光合成能が低下することが明かとなった。この場合に認められた、光合成能と葉のsucrose含量の間の負の相関関係およびRuBPcase活性の低下、そして葉のRuBP含量の増加は我々がこれまで行ってきた、source-sinkモデル植物をsink-limited条件下においた場合に認められた結果と一致した(Sawada et al.,1986-1992)。しかし、植物個体をsink-limited条件下においた場合には、葉のP_1含量は測定時々に大きく変動し、これまでモデル植物において得られているような結果が認められなかった。この理由は、植物個体においては、リン酸の施肥方法、個体間の葉のリン酸含量のバラツキ、液胞内のリン酸含量等が葉のP_1含量測定値に大きく影響しているためと考えられる。 2.ほ場における実験 一昨年および去年と同様に、ダイズ2品種を孤立個体および高密度群落状態で栽培し、source/sink能のバランスを変えた。今年度は、これまで計画していたが実行できなかった実験項目について実験を進める予定であったが、本年度は実験期間中天候が悪く、全く実験が進められなかった。
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