研究概要 |
植物細胞内で一般的にみられる原形質流動にはアクトミオシン系が関与していることが明らかとなってきた。繊維状に配列されたアクチン分子に沿って細胞小器官に結合したミオシン分子がATPの加水分解エネルギ-を用いて滑ることにより流動力が発生する。さらに最近,原形質流動がカルシウムによって阻害されることが分ってきた。これは筋肉をはじめとする動物のアクトミオシンがカルシウムによって活性化されるのと対象的である。本研究は車軸藻と花粉管に関してカルシウムによる原形質流動の制御機構を解析するものである。 車軸藻における原形質流動の低温阻害:原形質流動は一般的に低温に感受性が高いことが知られている。流速の温度依存性はアクトミオシンの温度依存性を反映しているものと思われる。しかしながら,原形質流動に関与するアクトミオシン系がカルシウム感受性を持ち,原形質流動に関与するアクトミオシン系がカルシウム感受性を持ち,原形質内の遊離カルシウム濃度の制御が能動輸送によってなされていることを考え合わせると,流速の温度依存性はアクトミオシン系の温度依存性のみならず,遊離カルシウム濃度をも反映している可能性がある。そこで高性能低温顕微鏡によって流速の温度依存性を正確に測定した。流速の依存性は特に低温部において細胞間に差がみられた。そこで液胞膜除去細胞を用いて同実験を行ったところ、ほとんどすべての細胞において温度と流速の関係が一定であった。この場合,細胞内に高濃度のEGTAが含まれており,低温下でも原形質内遊離カルシウムが一定に保たれることにより,安定した流速の温度依存性が得られたものと考えられる。 花粉管ミオシンのカルシウムによる制御:テッポウユリ花粉管の粗抽出液を用い,invitvo motility assayによってミオシンのカルシウム感受性を調べたところ、カルシウム感受性はみられなかった。この結果は原形質流動のカルシウム制御には別の因子も関与していることを示す。
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