1)テッポウユリ花粉管からのミオシンの精製:植物細胞内において見られる原形質流動の力発にはアクトミオシン系が関与しており、カルシウムによる抑制性の制御を受けることが知られている。その制御機構は主として車軸藻を用いた生理学的な方法により研究が進められてきた。原形質流動のカルシウム制御機構をさらに詳しく調べるためにはアクチンやミオシンを精製して。分子のレベルにおける解析を行う必要がある。しかしながら、車軸藻は生化学的な研究には適していないので、本研究では材料としてテッポウユリ花粉管を用い、ミオシンの精製を試みた。その結果、重鎖として170kDのポリペプチドを持つ植物ミオシンを精製することに成功した。ミオシンのアクチンフィラメントとの滑り活性を指標として、植物からミオシンを精製したのはこれが初めてである。現在、このミオシンを用いてカルシウムによる制御機構を解析している。 2)車軸藻における原形質流動のカルウシム制御の機構:車軸藻において、外液のカリウム濃度を上昇させた時の脱分極にともなう原形質流動の停止現象に関する解析を行った。外液カリウム濃度を0.1mMから50mMに上げると急激な脱分極とそれに伴う流動の停止が起こった。カリウム濃度を下げると膜の再分極に引き続く、流動の回復が起こった。二価カチオンを加えると、高濃度カリウム存在下においても流動の回復が起こった。二価カチオンの原形質膜への結合と情報伝達について論じた。 3)車軸藻原形質流動の温度依存性の解析:低温顕微鏡を用いて原形質流動の温度依存性について解析した。正常細胞においては低温度部において阻害が著しいものが見られた。しかしながら、液胞膜除去細胞を作製し、カルシウムキレート剤やpHバッファーを導入すると、低温部での著しい阻害が解除された。このことは、低温における流動阻害にはカルシウムやプロトンのホメオスタシスが関係していることを示す。
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