研究概要 |
1.光化学系Iで光還元され、酸素を自動酸化することにより、らん藻に光・酸素ストレスをもたらすメチルヴィオロゲン(MV)に耐性をもつScynechocystis PCC6803の突然変異株を選抜した。エチルメタンスルフォン酸で突然変異処理した細胞をMV30μMを含む培地で弱光下(1500 lx)で培養した。生育が良好なMV耐性株184株を単離した。野生株はMV10μM存在下で死滅するが、耐性株は、株により 20ー60μM MVに耐性であった。クロロフィル蛍光を測定したところ183株は野生株に類似した蛍光のパタ-ンを示したが1株は蛍光収率が野生株に比べ高かった。この株は電子伝達系を含めた光合成または呼吸に変異があるものと思われる。またすべての株は野生株と同様なMV取り込みを示した。過酸化水素に対する耐性は野生株と同程度であった。現在、活性酸素消去酵素の活性測定、二次元電気泳動による特異的な発現タンパク質の分析等によりMV耐性の分子機構を解析している。 2.光・酸素ストレス下では、電子伝達系で過剰な還元力が生成し、細胞成分に障害をもたらすが、らん藻の呼吸伝達鎖は、光合成電子伝達鎖と共役しているため、過剰な還元力が生じた際の還元力の消去に機能している可能性がある。こうした光合成と呼吸の相互作用を解析するため、分光法による分析手段を開発した。Synechococcus PCC7002,Synechocystis PCC6803では、呼吸基質の酸化分解による還元力のプラストキノンプ-ルへの流入が大きく暗所でもプラストキノンが還元状態にあることが光化学系I反応中心P700の吸光度変化から推定された。またNADPHプラストキノン還元酵素が呼吸ばかりではなく、循環的電子伝達にも機能していることが明らかになった。
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