[A]光化学系II反応中心の構造の解析 これまでの研究により、光化学系II反応中心の単離に成功し、これがD1、D2と呼ばれる2種の蛋白質を中心に構築されていることを明らかにした。本研究では、そのポリペプチド組成比および色素組成比を決定した。また、外部からキノンの誘導体を添加してQ_AおよびQ_B機能の回復を試みた結果、ある種のキノン誘導体が極めて効率よく電荷の再結合と再結合の結果生ずるP-680の三重項状態( ^3P-680)形成を阻害し、正電荷を安定化することを示した。 一方、配向した反応中心について ^3P-680のEPRシグナルを用いてその存在状態を解析し、この状態を担うクロロフィルのポリフィリン面が膜に対して約30゚の角度を持つことを推論した。 [B]光化学系II反応中心の損傷と修復の解析 光化学系II反応中心は[A]で示したように、D1、D2蛋白質を中心に構築されている。ところが、D1蛋白質は光照射下で急速に分解され、新しく合成された蛋白質で置換される。本研究では、光に依存するD1蛋白質の合成に焦点をしぼり、その分子機構を解析した。 (1)D1蛋白質C-末切断酵素の純化 D1蛋白質は合成直後に、そのC末9残基が切断されことにより酸素発生系の構築が可能になる。本研究ではこの過程に関与する酵素の純化を試み、これにほぼ成功した。 (2)D1蛋白質合成の光制御のメカニズムの解析 単離葉緑体を用いてD1蛋白質合成の光制御の機作を解析し、これがATPの葉緑体ストロマ画分により支配されていることを明らかにした。また、mRNA翻訳の伸長段階の特定の段階で停止する現象を見出し、これが光制御の一断面を示している可能性を示した。
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