研究概要 |
光形態形成に関する生理作用の解析が最も進んでいるシダ植物のフィトクロム反応を更に研究するため、シダフィトクロム分子の諸情報を得る第一段階としてcDNAのクロ-ニングと塩基配列の解析、フィトクロム分子の遺伝子数の解析、ならびにシダフィトクロムの抗体の作成のための人工ポリペプチドの合成、バクテリアによるアポプロテインの合成を行った。 暗所で育てたホイライシダ複相世代の組織からpoly(A^+)RNAを調整し、cDNAライブラリ-を作成した。アラスカエンドラのフィトクロムcDNAの一部をプロ-ブとし,ライブラリ-中から7つのcDNAクロ-ンを単離した。製限酵素地図から7つのクロ-ンは同一の物と思われる。全長の最も長いクロ-ン(pEP1)をプロ-ブとして、明所。暗所で育てた組織から抽出したRNAのスロットブロット分析をした結果、このRNAは暗所ではよく発現しているが、明所では発現が非常に少ないことがわかった。ダイデオキシ法によりpEP1の塩基配列を解析したところ、4100bpのcDNA配列を含んでいた。この塩基配列から推定されるアミノ酸配列は、高等植物のフィトクロムのアミノ酸配列とN末端側で類似し、C末端側では類似度が低かった。またアミノ酸配列中の親水性、疎水性部位からは、生体膜を貫通するような領域は見出せなかった。 このcDNAをプロ-ブとし、ホウライシダ中にフィトクロム遺伝子がどれだけ存在するかをサザンハイブリダイゼ-ション法で調べた結果2種類以上の存在が示唆されたが、さらに実験を継続中である。 抗体作成のために、フィトクロム分子の外側に存在すると考えられる部分の15アミノ酸からなる人工合成ポリペプチドを3種類合成するとともに、pFP1全長のアポタンパクをバクテリア内で合成させた。これらによる抗体は近々得られる予定である。
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