研究概要 |
自然界における,特異な葉緑体DNAーピレノイド局在型の葉緑体をもつ植物の分布を調べるために,緑藻類26種,黄緑色藻5種について,DAPI染色法により検索した。その結果,多核嚢状緑藻イワヅタ属(Caulerpa)3種と,黄緑色藻1種,オ-ストラリア産未同定イワヅタ1種の計5種でその存在が確認された。その他のものについては,いずれも“分散型"であった。それらの生物に共通する生物学的性質は,分類学的には別の分類群(緑藻綱と黄緑色藻綱)に属するものであるが,体制が嚢状体で,多核であるという点が注目される。 ピレノイドの組成を解析するために,クビレヅタを使ってピレノイドの分離法の確立を行った。現在まだ満足すべき方法の確立には致っていないが,完成度60%でなお改良中である。ピレノイドの分子高次構造をを解析するため,数種の界面活性剤処理を行なった。その効果を電子顕微鏡を使って微細構造をチェックした。ピレノイド基質は,通常の超薄切片像では均質な構造に見えるが,1%Triton×100で溶解すると,切片では確認できない『結晶要素』,『高電子密度の粒子要素』,『繊維要素』、『それら3要素の間を埋める物質』の4要素が出現する。さらにプロナ-ゼE処理を行うと,「高電子密度粒子」と「間充物質」が消失し,DNaseI処理を行うと,「繊維要素」が消失した。以上のことから,顕微化学的にはピレノイド基質はタンパク質性粒子要素とDNA繊維で構成されていることがわかる。DNA繊維を除く他の3要素のどれがRubiscoに相当するかは,抗体を作製して同定する必要がある。Rubisco大サブユニツトに関しては抗体染色で確認できたが,小サブユニツトの抗体を現在作製のため材料の確保に努めている。光顕レベルの解析ではDNA,大サブユニツトととにピレノイド部位への局在性を明瞭に示した。
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