研究概要 |
1.自然界における特異な色素体核様体DNA・ピレノイド局在型の葉緑体の分布を前年に引き続き調査した。前年度までに発見された「分散型」,「イワヅタ型」以外に,本年は新たに「外周型」というべき新たらしい局在様式を示すものが緑藻Trebouxia属で見い出された。すなわち、ピレノイド基質を取り周むピレノイド・デンプン鞘の外側に,ド-ナツ状(横断面で)にDNAが局在する。本藻は地衣類を構成する緑藻で,今回もウメノキゴケから分離した種で確認されたが,今後は独立生活をする種,生活史,生理条件による局在の可変性を解析する。 2.前年度までに,DAPI染色蛍光顕微鏡法,抗DNA抗体,抗Rubisco抗体等の免疫染色法を使って光学顕微鏡レベルで確認されたイワヅタ型ピレノイドの組成を生化学的に解析するために必要なイワヅタピレノイドの分画法を検討した。その結果、1%Nonidet P40で10分,3回処理することによって葉緑体,ビレノイド分画が80%以上の純度で得られた。残された問題点は,本藻に特有に存在する多量の糖質が混入断片をまき込むため完全な純度を達成できないことである。今後に残された課題である。分画をSDSーPAGE,NativeーPAGE,抗RubiscoーLSU抗体ウエスタン・ブロッド等で検討し,RubiscoのLSUに相当する分子量52KD,14〜15KD(SSU)タンパクが得られた。今後は,ピレノイドDNA結合タンパク質の解析を行う計画である。 3.抗DNA抗体,抗Rubisco抗体(LSU)ー金コロイドを使った免疫電顕法によるDNA,Rubiscoの局在を検定した。その結果、本法は細胞内におけるDNA分布の局在を調べる有効な方法であることがわかり,本課題のDNAのピレノイド局在が証明された。また抗Rubisco抗体との二重染色により,DNAと酵素の併存という特異な性質が細胞生物学的手技により初めて視覚化された。
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