研究概要 |
【細胞学的解析】ピレノイドに核様体DNAが局在する生物の分布を知るために、淡水産の緑藻を調査した。新たに3属4種(Trebouxia sp.,T.potteri,Parietochloris pseudoalveolaris,Stichococcus bacillaris)と未同定鞭毛藻2種で見つかった。また、新たにデンプン鞘の外側を核様体DNAが環状に包囲する外包囲型DNA核様体を2属3種(Tetrasporagelatinosa,T.lubricua,Diplosphaera chodati)で見い出した。次に、生活環の進行にともなう核様体DNAの挙動を調べた。生殖細胞形成期にピレノイドの消失が起こり、核様体DNAも葉緑体内に分散する。生殖細胞が栄養細胞に分化するに伴ってピレノイドも出現し、その後ピレノイド内へ核様体DNAが局在化することが明らかになった。 【分子生物学的解析】フサイワズタを使って、ピレノイド・葉緑体核様体複合体の組成を明らかにするため、ピレノイドの単離を行った。藻体を破砕後、ショ糖密度勾配遠心で葉緑体画分を分離し、ついで1%になるようにNonidet P40を加えて葉緑体を溶解した。遠心で沈澱を集め、ピレノイド画分を得た。単離したピレノイドはデンプン鞘で囲まれており、内部にDNAが認められた。ピレノイド画分をSDS-PAGEで調べたところ、97KDa,63KDa,54KDa,28KDa,14KDaの6種のタンパクが認められた。DNase I,RNase A,Protease K反応及びNaClでの高塩濃度処理後、DAPI染色・観察した。DNase処理では核様体DNAの蛍光は消失し、Protease処理で核様体は膨潤し、RNaseでは変化がなかった。0,0.1Mの低NaCl濃度では核様体はデンプン鞘内で収縮し、1,2Mと塩濃度が高くなるにつれて核様体は膨潤した。NaCl処理の上清を調べたところ、ピレノイドの成分である54KDaと14KDaのRubiscoの大・小サブウニット以外に、44KDaのタンパクが存在した。これらのタンパクと葉緑体DNAによってピレノイド・核様体複合体が構成されていると考えられる。
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