動物胚の初期発生過程における遺伝子発現制御機構を明らかにするため、ウニ胚アリ-ルスルファタ-ゼ(Ars)遺伝子をモデルにして、その転写制御に関わるシスエレメントの同定トランス因子の検出を行い、下記の成果を得た。 1.CATアッセイにより、Ars遺伝子5'上流には転写の基本プロモ-タ-の他、-3kb〜-1.9kbには転写を促進するエンハンサ-領域、-1.5kb〜-1.3kbには転写を抑制するサイレンサ-領域が存在することがわかった。このうち、エンハンサ-領域には転写促進に関わる配列が複数個みつかった。 2.これらの各領域に結合する核蛋白質多数をゲルシフト法で検出し、その結合する塩基配列をフットプリント法で明らかにした。各領域にはそれぞれ複数個の蛋白質が結合するというデ-タも得られており、これらの蛋白質は発生時期に伴って変動した。これらのDNA結合蛋白質はArs遺伝子転写制御のトランス因子として働くと考えられる。 3.サイレンサ-領域はシトシンとチミンに富むCT領域であること、この領域中の(CT)_<11>配列は三重らせんDNA構造であることを明らかにし、これがDNA結合蛋白質の認識部位として働く可能性を指摘した。サイレンサ-領域には数種の蛋白質が塩基配列特異的に結合し、結合蛋白質のパタ-ンが、発生時期特異的に変化することもサウスウエスタン法で明らかにした。これらのDNA結合蛋白質の単離はすでに開始している。 以上の結果は、初期発生胚における遺伝子発現制御の分子機構の解明に一定の貢献をしたものと考えている。
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