研究概要 |
淡水産ヒドラは単純な体制と強い形態形成能力を持ち、形態形成機構の研究をするための理想的モデル小動物である。申請者は日本産チクビヒドラ(<Hydra>___ー <magnipapillata>___ー)を用い、発生機構に異常を示す突然変異系統を多数分離、同定し研究を進めてきた。 形態形成過程は、概念上二段階に分けて考えることができる。第一段階は、一様に見える組織内において、「位置情報」(Wolpert,1974)に基づく組織の部域特異化がおこり、将来どの部域にどの構造が形成されるかが決定される段階である。ヒドラの場合「反応拡散機構」(Gierer and Meinhardt,1974)がこの段階で主要な働きをすると考えられている。第二段階は、前段階の決定に基づく構造変化が実際に起こり、新しい形が形成される段階である。脊椎動物の場合「細胞接着分子」がこの段階で重要な役割を果たすことが示されている(京大竹市、ロックフェラ-Edelman)。 申請者は従来主としてヒドラの第一段階の研究を行ってきた。その結果、従来の考えに反し頭部再生と出芽は同一の位置情報により制御されるのでないことを明らかにした。 本研究計画においては、第一段階と並行して新たに第二段階の研究を開始した。そのために脊椎動物細胞接着分子に対して作成された抗体を用い、ヒドラ組織の免疫組織学的染色を試みた。その結果カドヘリンC末端の共通アミノ酸配列に対して作成された抗体で識別される抗原がヒドラ組織の特定部域に存在することが明らかになった。現在この抗原の同定を行っている。 また共通配列部域の塩基配列をプロ-プとしてPCR法によるDNAクロ-ン分離も試みている。
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