研究概要 |
平成2年度の実績を2つにまとめる。これまで両生類のカルシトニンを純化する為に,ウシガエルを用いてカルシトニンを含む鰓後腺を培養し,できるだけ夾雑物のない条件下で培養液からのカルシトニンの抽出を考えてきた。従って,できるだけカルシトニンが培養液中に放出される条件を明らかにする必要があり,これまで実験が重ねられてきた。その結果,従来までは通常の培養液のCa濃度を2倍にした液で培養するのが1番,放出効果が高いとの結果を得ていた。本年度は,さらにすぐれた培養条件を求めて,培養液のMg濃度を2倍にしたり,培養液の浸透圧をCa2倍の培養液と等しくした培養液で鰓後腺を培養した。その結果,これらの培養液においてもCa2倍の培養液と同程度にカルシトニンを放出させる効果があることが明らかになった。これが実績の1つである。 又,この実験を行っている過程で,夏と冬とではウシガエルの鰓後腺からのカルシトニンの放出に差があり,冬では抑制的であることが明らかになった。このことは冬期にはカルシトニンは活発には分泌されず,鰓後腺に貯留したままになっている可能性を示唆している。これが実績の2つ目である。本研究においては,鰓後腺それ自体もホモジェネ-トして,そこよりカルシトニンを純化することも考えているので,その場合は,冬期の個体より摘出した鰓後腺を用いてカルシトニンを抽出するのがより効果的であるかもしれない。これらの結果は,日本比較内分泌学会第15回大会(山梨)にて報告した。一方,実際に抽出を始めると,HPLCを用いて培養液を流した時,当初,考えていたよりもやや夾雑物が多いことに気がついた。又,鰓後腺のホモジェネ-トを流した時は,期待量をやや下まわった収量しか得られなかった。従って,現在,より多くのウシガエルを入手し,鰓後腺を多数,集めつつある。
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