研究概要 |
底生有孔虫類の殼形態が持つ生物学的意味を明らかにすることを目的として、個々の環境要素を独立に制御した飼育実験を行った。平成4年度は次のような研究を行った。 (1)粗飼育……有孔虫を実験動物として研究室内に確保するために、日本沿海より多数の底質試料を採集した。実験室内では、温度・塩分濃度・光を制御して、有孔虫を底質とともに飼育した。 (2)精密制御飼育……相模湾に生息する深海生底生有孔虫、Chilostomella ovoidea Globobulimina affinis,Bolivira pacifica,Textularia kategotteirsisを餌濃度と水圧を制御しながら単離飼育した。Globobulimira affinisとCHilostomella Ovoideaは、1気圧の条件下で 2〜3ヶ月後に1つ房室を付加し、成長した。また、採集深度(1450m)とほぼ同じ水圧(150気圧)をかけて飼育したところ、これらの種は約1ヶ月で1つ房室をつけ、成長した。これらの深海生種は高い水圧条件下でよく成長する好圧性種である。餌濃度を変えた実験を行ったところ、10^7細胞1cc以下の濃度では生存できなかった。なお、餌・水圧の影響は殼形態には反映しなかった。 Glabratella opercularisのシゾントから無性生殖によって生まれたクローンを用いて、温度・塩分濃度・光・エサを制御した実験を行った。G.opercularisは、飼育する温度条件が異なると成長速度が変わり、15℃で最もよく成長した。しかし、温度条件を変えても殼形態に変化はなく、殼の高さ、刺などの形態変異は温度以外の要因によって起っていると考えられる。 この他、Ammonia beccariiの飼育実験も継続して行った。
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