本研究において、西南日本内帯の美濃帯に位置する4地域の下・中部ジュラ系中のマンガンマイクロノジュ-ル5試料((1)NJー12:Pliensbachian後期〜Toarcian前期;185Ma、(2)HKー140:Aalenian;176Ma、(3)GHー1:Bajocian前期;172Ma、(4)Inー7:Bajocian;168Ma、(5)INー1:Bathonian;165Ma)を主たる研究試料として用い、それより産する放散虫化石群の種オ-ダ-での群集組成を詳細に解析した。なお、秩父累帯や外国(ヨ-ロッパアルプス)の試料についても検討を進めたが、上記5試料と同等に比較できるほど保存良好なものは得られなかった。 平成2年度および3年度の研究成果は次のようにまとめられる。(1)各試料の化石群集を構成する種数は、200〜300種であり、各群集とも多数の種で構成される。(2)各群集の構成種数と各群集間の共通種数にもとづいて類似度を算出すると、隣接層準間の類似度は高く、層準が離れると低くなる傾向を示し、特微種から判断した各試料の新旧関係に調和的である。(3)群集変遷パタ-ンは、短期間に新種の放散があり、数百万年以内にその半数が消滅する一方、残りの半数は千数百万年をこえる長期間生存していたことを反映すると考えられる。(4)各層準間の百万年あたりの種の出現率・消滅率を計算すると、出現率はジュラ紀古世末からジュラ紀中世初頭に急激に高くなりその後次第に低下したが、消滅率は徐々に高くなったことがわかる。 以上の群集解析の結果からジュラ紀古・中世放散虫化石の群集変遷は、各群集を構成する各種の生存期間の長短や出現率・消滅率の高低などに規制されていると考察される。今後の研究課題として、生存期間の長短や出現・消滅率の高低などは何に規制されるのかを明らかにすることが重要である。
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